【和訳・解説】"Houdini" - Eminem|The Death of Slim Shady
- T.Y
- 2024年6月8日
- 読了時間: 7分
Eminemがリリースを予定している12th アルバムである"The Death of Slim Shady"からの先行シングル"Houdini"を紹介します。
[Skit: Paul Rosenberg]
Hey, Em, it's Paul
おーいEm, Paulだよ
Uh, I was listening to the album
アルバムを聴いてたんだ
Good fucking luck, you're on your own
幸運を祈るよ、全部自己責任だからな
[解説]

Paul RosenbergはEminemのマネージャーであり、顧問弁護士も担当しています。彼のレーベルであるShady Recordの共同設立者であり親交のかなり深い人物です。これまでのEminemの曲にも多く登場します。
[Intro: Eminem]
Guess who's back, back again?
誰がまた戻ってきたんだって?
Shady's back, tell a friend
Shadyが帰ってきたぞ、友達にも教えてやれ
Guess who's back, guess who's back
Guess who's back, guess who's back
Guess who's back, guess who's back
Guess who's back
(Da-da-da, da, da, da, da, da, da)
(Da-da-da, da, da, da, da)
[解説]
耳になじみのあるフレーズだと思います。Eminemの代表曲である"Without Me"のHookから引っ張ってきていますね。

"Slim Shady"はEminemが時折見せるアルターエゴ(日本でいえばキャラ付け)です。Slim Shadyはブロンドの髪をしていることが特徴で、通常時よりもより過激なテーマを扱います。
彼をテーマにしたEPも存在します。
[Verse 1: Eminem]
Well, look what the stork brung
えーと、あのコウノトリが何持ってきたか見てみろよ
(What?) Little baby devil with the forked tongue
(なんだって?)舌の割れた赤ちゃん悪魔だよ
And it's stickin' out, yeah, like a sore thumb
そいつは悪目立ちしてるんだ
(Bleah) With a forehead that it grew horns from
おでこからは角が生えてるからな
[解説]
自身のことを悪魔に例えています。"forked tongue"は蛇のように割れた舌のことを言いますが、Slim ShadyとEminemの二面性を表しているとも考えられます。

"stick out like a sore thumb"は好ましくない様相で目立つという意味のイディオムですが、"stick out"は単純に舌を突き出していることも描写しています。(Eminemはよく悪魔のサインを使います)
Still a white jerk
未だに白人の嫌な奴だ
Pullin' up in a Chrysler to the cypher with the vic's, percs and a Bud Light shirt
サイファーにクライスラーで現れる、大麻とパーコセット、それからBud lightのTシャツで
Lyrical technician, an electrician y'all light work
リリカルなテクニシャンで、お前らを軽く伸しちまう電気技師みたいだ
And I don't gotta play pretend, it's you I make believe
俺はごっこ遊びはしない、お前を騙してやるだけだ
And you know I'm here to stay 'cause me
俺は俺だからここにいるって知ってるだろう
If I was to ever take a leave, It would be aspirin to break a feve
俺がやめることがあるとすれば、解熱のためにアスピリンをとることになるだろうな
If I was to ask for Megan Thee Stallion if she would collab with me
ミーガンにコラボしてくれないかって頼むとしたら
Would I really have a shot at a feat? (Ha!)
足を撃ち抜くことになるかな?(そうさ!)
I don't know, but I'm glad to be back, like
知ったこっちゃないけど、戻ってこれてうれしいよ
[Chorus: Eminem]
Abra-abracadabra
アブラ、アブラカタブラ
(And for my last trick) I'm 'bout to reach in my bag, bruh
(最後のトリックのために)鞄に手をいれようとしてる
Abra-abracadabra
アブラ、アブラカタブラ
(And for my last trick, poof) Just like that and I'm back, bruh
(最後のトリックのため)こんな感じで、俺は戻ってきたんだよ
[解説]
"Houdini"は、アメリカで活躍したマジシャンであるHarry Houdiniから来ています。アブラカタブラは魔法を連想させるフレーズであり、鞄に手を入れるのもマジックではよくあることですね。
"The Death of Slim Shady"が、恐らくSlim Shadyとしての最後のものになることも読み取れます。(Childish Gambinoも終わりを迎えますし、アルターエゴの終焉が相次いでいます。)
メロディーはSteve Miller Bandの"Abracadabra"から持ってきています。(タイトルにURLを貼っています)
[Verse 2: Eminem]
Now back in the days of old me
さて、昔の俺に思いをはせてみよう
(When) Right around the time I became a dope fiend
まさにそのとき、俺はヤク中だった
Ate some codeine, as a way of coping taste of opiates, case of O.E
オピオイドの代わりにコデインを摂ってた、酒もやった
Turned me into smiley face emoji
俺を笑顔の絵文字みたいにしてくれたんだ
[解説]
"old me"は昔のドラッグ中毒者のエゴとしてのSlim Shadyのことです。"dope fiend"はこのままで薬物中毒者という意味になりますが、直訳であるドープな悪魔という意味でもとれるでしょう。
"O.E"はアメリカのビールブランドである"Olde English"を指すスラングです。(OLd Eminemともかかっているかもしれません)
My shit may not be age appropri— ate
俺の曲は適切に年を取ってはないかもな
but I will hit an eight year old in the face with a participation trophy
でも俺は参加賞を8歳のガキにでも突き付けてやるよ
'Cause I have zero doubts
なぜって俺は一切疑ってないからさ
That this whole world's 'bout to turn into some girl scouts
この世界がどうやらガールスカウトみたいになろうとしているってことを
[解説]
Eminemの作品(とくにSlim Shady)は過激なコンテンツを扱うことも多く、その内容には議論がつきまとってきました。彼はそうしたものが若い世代に受け入れられないことを煩わしく感じており、"participation trophy"、つまり順位に関係なく参加したことに対して与えられるトロフィーという最近の文化を用いることで現代の世代をあざけるような態度をとっています。(小学校でもかけっこの順位という概念がなくなりつつあるそうです)競争を避ける姿勢はある意味女々しいといえ、彼はそれをガールスカウトに例えています。
That censorship bureau's out to shut me down
検閲局は俺を黙らせようと躍起になってる
so when I started this verse
だからこのバースの初めには
It did start off light-hearted at first
まず陽気な感じにするようにしたよ
But it feels like I'm targeted
それでもやっぱり狙われてる感じがするんだ
[解説]
Eminemはリリックの過激さで常に物議をかもしてきましたが、実際に曲に検閲が入ったケースもあります。"The Real Slim Shady"をリリースした際、流したラジオ局が罰金を食らうこともありました。FCC(連邦通信委員会)に対して、"With Out Me"のなかでも反抗的な態度を表明していました。
Mind bogglin' how my profit has skyrocketed, look what I pocketed
俺は気が遠くなるくらい稼いでる、何をゲトったか見てみろよ
Yeah, the shit is just like y'all have been light joggin' and I've been running at full speed
お前らは軽くジョギングしてて、俺だけが全力で走ってるみたいだな
And that's why I'm ahead like my noggin, and I'm the fight y'all get in
だから俺の脳みそみたいに比類ないんだ、お前らみんな巻き込んで戦ってやる
[解説]
実際、Eminemはインダストリーのなかで最も売り上げを出しているラッパーです。
"noggin"は頭、脳みそという意味があり、"ahead"(a head)とかけています。
When you debate who the best but ops I'm white-chalkin'
誰が一番か話し合ってんのか、敵は白いチョークで囲んでやるよ
when I step up to that mic, cock it then
マイクに向かっていって、レバーを引くんだ
"Oh my god, it's him... not again!"
「なんてこった、またこいつかよ!」
[Chorus: Eminem]
Abra-abracadabra
アブラ、アブラカタブラ
(And for my last trick) I'm 'bout to reach in my bag, bruh
(最後のトリックのために)鞄に手をいれようとしてる
Abra-abracadabra
アブラ、アブラカタブラ
(And for my last trick, poof) Just like that and I'm back, bruh
(最後のトリックのため)こんな感じで、俺は戻ってきたんだよ
※繰り返し
[Bridge: Eminem]
Sometimes I wonder what the old me'd say
ときどき昔の俺ならなんていうか気になるんだ
(If what?) If he could see the way shit is today
もし今日のクソみたいな惨状を見たら
(Look at this shit, man) He'd probably say that everything is gay
(見てみろよ)あいつは全部ゲイっぽいなっていうだろう
(Like happy!) What's my name, what's my name?
(嬉しそうに!)俺は誰?俺は誰なんだ?
[解説]
競争原理を忘れ、過激な表現に敏感すぎるヤワな世の中を再び批判しています。
「もしも」のことにして、ここでもかなり過激なことを言ってますね。
[Verse 3: Eminem]
So, how many little kids still wanna act like me?
どれだけの子供がまだ俺にあこがれてる?
I'm a bigger prick than cacti be
俺はサボテンなんかよりずっと嫌な野郎だ
And that's why these words sting, just like you were being attacked by bees
だから俺の言葉はハチに襲われるみたいにチクチクしてるんだ
[解説]
"And there’s a million of us just like me" - The Real Slim Shady(2000)
「俺みたいなやつがごまんといるんだ」
"prick"は刺すという意味のある単語ですが、最低の野郎みたいな蔑む意味のスラングでもあります。サボテンやハチは針のあるものの代表格ですね。
In the coupe leaning back my seat
クーペで背もたれに倒れかかって
Bumpin' R. Kelly's favorite group, the black guy pee's
音量を上げろ、R. Kellyのお気に入りの「黒人のおしっこ」だ
In my Air Max 90's White T's walkin' parental advisory
エアマックス90を履いた白T、18禁がかかっちまうよ
My transgender cat's Siamese
俺のトランスジェンダーのシャム猫
Identifies as black, but acts Chinese
黒人だって自認してるけど、行動は中国人
Like a motherfuckin' hacky sack I treat the whole world, 'cause I got it at my feet
世界中をフットバックみたいにあしらってやる、なんてったって足元にあるんだからな
How can I explain to you?
どう説明すればいいだろう?
That even myself, I'm a danger too
俺なんだ、俺でさえ危険なんだよ
I hop on tracks like a kangaroo
カンガルーみたいにトラックに乗っかる
And say a few things or two to anger you
何かいって、お前を怒らせる
But fuck that, if I think that shit, I'ma say that shit
でもくそくらえ、考えたことをすぐ言っちまうんだ
[解説]
SLim Shadyの過激さの矛先が、Eminem自身に向かないとは限りません。アルバムのタイトルである"The death"が内なる闘争の結果であるのか、自然消滅的なものであるのかはまだわかりませんが。
Cancel me what? Okay, that's it, go ahead, Paul, quit
なんてってキャンセルするんだ?わかったもういいよ、勝手にしろよ、ポール、もうやめだ
Snake-ass prick, you male crossdresser, fake-ass bitch
陰険な野郎、女みたいな恰好しやがって、ニセもんのビッチだ
And I'll probably get shit for that
そしたら叩かれるんだろうな
(Watch) But you can all suck my dick, in fact
でも実際あいつら俺のをしゃぶれるんだろ?
[解説]
Paulがスキットに登場するとき、いつも彼は曲の出来に懐疑的です。
またもや性的マイノリティに対して攻撃をしかけています。"cross dresser"は女装家(単語自体は男性に限りませんが)のことを表します。
Fuck them, fuck Dre, fuck Jimmy, fuck me, fuck you, fuck my own kids they're brats (Fuck 'em)
あいつらも、Dreも、Jimmyも、俺も、お前も、子供たちもクソくらえだ、あの悪ガキどもが
They can screw-off, them and you all
失せてもいいんだぜ、あいつらとお前たちみんなも
You too, Paul, got two balls, big as RuPaul's,
お前もだポール、ルポールみたいにでっかいタマしやがって、
what you thought you saw ain't what you saw, 'cause you're never gon' see me
お前が見たものは実態じゃないんだよ、だって俺を見ることなんてないだろうからな
[解説]
Dr.DreとJimmy lovineはEminemのキャリアの中でなくてはならない人物でした。F**kはSlim Shadyにとってのラブコールなんでしょう。(3人の子供にすらいってますからね)

Rupaulは有名なドラッグクイーンです。マネージャーのPaulとかけており、"male cross dresser"は彼のこともさしていると考えられます。
見ることがないという部分についていえば、Eminemが文字通り雲の上の存在であること、そしてこの曲の題名でもある奇術王のHoudiniのように消えてしまうこと、がかかっていると考えられます。
Caught sleepin' and see the kidnappin' never did happen
浮気がバレて、起こったはずのない誘拐をでっち上げる
Like Sherri Papini, Harry Houdini, I vanish into the thin air as I'm leaving, like
Sherri Papiniみたいに、Harry Houdiniさ、俺は溶けいって行っちまうんだ
[解説]
Sherri Papini、彼女は突然姿をくらまし、誘拐事件として捜査され、見つかったあともそのような供述を続けていましたが、実際は過去の交際相手とねんごろになっていただけだったことが判明します。
[Chorus: Eminem]
Abra-abracadabra
アブラ、アブラカタブラ
(And for my last trick) I'm 'bout to reach in my bag, bruh
(最後のトリックのために)鞄に手をいれようとしてる
Abra-abracadabra
アブラ、アブラカタブラ
(And for my last trick, poof) Just like that and I'm back, bruh
(最後のトリックのため)こんな感じで、俺は戻ってきたんだよ
※繰り返し
Houdiniでした。なじみやすいメロディーにユーモラスに痛烈な言葉をのせていくその姿はまさに帰ってきたという感じがしますね。アルバムの続報にも期待しましょう。
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