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【和訳・解説】"Pyramids" - Frank Ocean|Channel Orange

  • 執筆者の写真: T.Y
    T.Y
  • 2024年10月20日
  • 読了時間: 8分

更新日:2024年10月23日


Blondeからフランク・オーシャンを知ったという人は多いと思いますが、Channel Orangeというデビューアルバムもまさに傑作だといえる。そんな中でも、一際輝く超大作、"Pyramids"を紹介する。


[Refrain]

Oh, oh, oh, oh


Set the cheetahs on the loose

チーターを放つんだ


Oh, oh, oh, oh


There's a thief out on the move

人さらいが逃走中


Oh, oh, oh, oh


Underneath our legion's view

我々の統治のもとで


Oh, oh, oh, oh


They have taken Cleopatra

クレオパトラを連れ去ったんだ


[解説]

・この曲は2部に別れているのだが、1部の世界観は古代エジプト。特に世界3大美人の一角に数えられるクレオパトラがテーマとなっている。

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チーターを飼っていたと噂される彼女だが、猫の神バステトが存在するくらいだし文明レベルから考えても事実かもしれない。チーターという発音は浮気者、という意味のcheaterにも類似。


・人さらいがクレオパトラを連れ去るところからストーリーは始まる。


[Bridge]

Run run run, come back for my glory (Cleopatra)

急ぐんだ、私の輝きを取り戻すために


Bring her back to me (Cleopatra)

彼女を取り戻すために


Run run run, the crown of our pharaoh (Cleopatra)

急ぐんだ、我らがファラオの冠と共に


The throne of our queen is empty (Cleopatra)

女王の王座にはだれもいない


[解説]

・どうやらここでは王の視点が展開されている。クレオパトラは20年もの間位に就き、国政、外交上で大きな役割を果たした。実際にその王座を離れたことはなかったが、恋仲だったギリシアのマルクス・アントニウスの死を受けて自殺。39歳で生涯を終えたとされている。

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[Verse 1]

We'll run to the future, shining like diamonds

二人は未来へ向かっていく、ダイヤのように輝く未来に


In a rocky world, rocky-rocky world

間違いのない、疑いようのない世界に


Our skin like bronze and our hair like cashmere

肌はブロンズで、髪はカシミアのよう


As we march to the rhythm on the palace floor

王宮のフロアでリズムに乗ると


Chandeliers inside the pyramids tremble from the force

ピラミッドのシャンデリアがそれで震えるんだ


Cymbals crash inside the pyramids, voices fill up the halls

シンバルの音がピラミッド中に響いて、歓声が沸く


[解説]

・ブロンズ、カシミアの比喩はエジプト人のアフリカ的側面を想起させる。Our、となっているところからクレオパトラは国内の男と駆け落ちしたのかもしれない。それかこれはファラオがクレオパトラにかけた言葉なのかもしれない。


・ここでいうピラミッドというのは、あの巨大なピラミッドのことではないだろう。現代のダンスホールをピラミッドに見立てていることが想像できる。


[Refrain]

Set the cheetahs on the loose

チーターを放つんだ


There's a thief out on the move

人さらいが逃走中


Underneath our legion's view

我々の統治のもとで


They have taken Cleopatra

クレオパトラを連れ去ったんだ


[Verse 2]

The jewel of Africa, jewel

アフリカの宝石さ、宝石だったんだ


What good is a jewel that ain't still precious?

もう貴重でもない宝石に何の価値があるんだ?


How could you run off on me? How could you run off on us?

逃げおおせるとでも思ってるのか?この関係から逃れられると?


You feel like God inside that gold

金に囲まれて神にでもなったつもりかよ


I found you laying down with Samson and his full head of hair

お前が髪の毛ふさふさのサムソンと寝てたのも知ってる


I found my black queen Cleopatra, bad dreams, Cleopatra

俺の黒い女王、クレオパトラよ、悪い夢であってくれ、クレオパトラよ


[解説]

・クレオパトラはよくアフリカの宝石と表現される。


・ここではクレオパトラの正式なパートナーの視点が語られている。どうやらクレオパトラは自由意志で彼のもとを去ったようだ。そんな彼にとって、彼女はもはや宝石ではなく、民衆が言うように聖なる存在でもない。


・"Samson"は古代イスラエル最後の裁判官として知られ、ギルガメッシュやヘラクレスなどの人物のイスラエル版として知られる。彼は超人的な力を持っていたのだが、恋人に裏切られ髪を切られたことでその力を失ってしまう。ここでは髪が有り余っており、裏切られた男とは違い若々しく強大な力を持った略奪者のイメージを与えている。

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[Outro]

Remove her, send the cheetahs to the tomb

あの女を排除するんだ、チーターを墓に送れ


Our war is over, our queen has met her doom

争いは終わりだ、これが女王の運命だったんだ


No more, she lives no more, serpent in her room

もう、彼女はもう生きちゃいない、部屋には蛇が


No more, he has killed Cleopatra, Cleopatra

もうたくさんだ、奴がクレオパトラを殺したんだ


[解説]

・裏切られた男はクレオパトラを消し去ることを決意する。クレオパトラは姿をくらましその権威も失墜。もう争っても意味がない。チーター(浮気者)は見つかって墓へと葬られた。


・実際のクレオパトラはコブラに自分を噛ませ、その毒で命を落としたとされている。蛇はアダムとイブに禁断の果実を勧めた存在であることから不貞、裏切りの象徴とされている。現実でも彼女を殺めただけでなく、ここでも彼女の裏切り(蛇)が彼女の輝きを失わせたのである。


[Segue]

Big sun coming strong through the motel blinds

モーテルのブラインドに強烈な日光が差し込む


Wake up to your girl

君も起きないと


For now, let's call her Cleopatra, Cleopatra

これからは、君をクレオパトラって呼ぶことにしたよ


I watch you fix your hair

君は髪型を整えて


Then put your panties on in the mirror, Cleopatra

鏡に向かってパンティーを試してる


Then your lipstick, Cleopatra

口紅も


Then your six-inch heels, catch her

6インチのヒールも、捕まえるんだ


She's headed to the pyramid

彼女はピラミッドへ向かうのさ


[解説]

・第2部、実は先ほどまでの内容がすべて夢だったことが分かる。女性とモーテルで寝ていた語り手は、彼女がピラミッドへ旅立つ準備をしているのを見ている。パンティーや口紅、6インチ(なんと15センチ)のヒールなど、彼女が水商売を生業としていることは明らかである。


[Chorus]

She's working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ



[解説]

・ここでピラミッド、と呼ばれているのはラスベガスにある"Luxor"というホテルであるとされる。確かにどう見てもピラミッドがモチーフの建築で、スフィンクスまである。これは「ストリップ」、という名前のストリートに位置するらしい。あとから判明するようにこの女はストリッパーだ。

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[Verse 1]

Pimping in my convos

コンバースを履いて仕事だ


Bubbles in my champagne, let it be some jazz playing

シャンパンには泡が、ジャズでもかけてさ


Top floor motel suite twisting my cigars

モーテルの最上階、スイートで葉巻をねじってる


Floor model TV with the VCR

ビデオレコーダー付きのテレビ


Got rubies in my damn chain

チェーンにはルビーを散りばめて


Whip ain't got no gas tank but it still got woodgrain

ガスタンク無しの車、ウッドパネルはついてる


Got your girl working for me

女を働かせるんだ


Hit the strip and my bills paid

ストリップさせて、金を稼ぐ


That keep my bills paid

それで金を稼いでる


Hit the strip and my bills paid

ストリップさせて、金を稼ぐ


Keep a nigga bills paid

それで稼ぎ続けてる


[解説]

・主人公は"pimp"、日本語でポン引きをしている。売春あっせん業だ。いい生活をしていて、女の帰りを高級品に囲まれて待っているのだ。


[Chorus]

She's working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


[Verse 2]

You showed up after work, I'm bathing your body

君が姿を見せて、俺は身体を洗ってあげるんだ


Touch you in places only I know

俺しか知らない場所で君に触れる


You're wet and you're warm just like our bathwater

この風呂のお湯みたいに濡れてて暖かいね


Can we make love before you go?

行ってしまう前に愛し合えないかな?


The way you say my name makes me feel like

君が俺の名前を呼ぶとさ


I'm that nigga but I'm still unemployed

俺があの男みたいに思えてくるんだよ、実際働いてすらないんだけど


You say it's big but you take it, ride cowgirl

デカいって言うけど余裕そうじゃないか、俺にまたがってさ


But your love ain't free no more, baby

もう君の愛は無償じゃないんだね


But your love ain't free no more

もう君の愛はただじゃないんだね


[解説]

・ここでは第1部と同様、クレオパトラを寝取られた男の視点が展開されている。ストリップの終わりに彼の家を訪れたクレオパトラであったが、ただで彼女を呼ぶことはできないのであった。


[Chorus]

She's working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid, that's right

ピラミッドで働くんだ、ああそうさ


Working at the pyramid tonight, yeah

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


Working at the pyramid

ピラミッドで働くんだ


Working at the pyramid tonight

今夜はピラミッドで仕事なんだ


フランク・オーシャンの持つ作詞能力にはいつも驚かされるが、その中でもこの曲は素晴らしいと思う。時代を超えて展開される薄情な物語の裏には、どんな経験があるのだろう。











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