【和訳・解説】"good kid (feat. Pharrel Williams)" - Kendrick Lamar|good kid, m.A.A.d city
- T.Y
- 3月2日
- 読了時間: 10分
更新日:3月10日
Kendrick Lamar不朽の2ndアルバム"good kid, m.A.A.d city"からトラック7はアルバムの名を冠した"good kid"。コンプトンという混沌の街にいながらギャングには属さず、友達に流されるなどもしながら日々を生きてきたケンドリックであったが、そんな彼がgood kidでい続けるためには大きな困難が付きまとったことだろう。
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[Chorus: Pharrell Williams]
Mass hallucination, baby
集団幻覚さ
Ill education, baby
イルな教育ってやつだ
Want to reconnect with your elations?
あの高揚感を取り戻したいかい?
This is your station, baby
ここが君の降りる駅だ
[解説]
・環境が人を作る、とはよく言ったものだが、ケンドリックが住むコンプトンではそれを実際に目撃することができただろう。集団幻覚のように若者は犯罪やドラッグに走り、そうした彼らなりのイル(イケてる)な基準は受け継がれていく。ただ住人にとってそこを抜け出すことは容易ではなく、降りる駅はそこしかない。
・このコーラスはロイ・エアーズ・ユビキティの"We Live In Brooklyn, Baby"をサンプリングしたものである。
[Verse 1: Kendrick Lamar]
Look inside these walls and you see I'm havin' withdrawals
この壁の中を見れば、俺が離脱症状に苦しんでるのが分かるだろ
Of a prisoner on his way
道半ばの囚人みたいな気分だ
Trapped inside your desire to fire bullets that stray
銃をぶっぱなしたいって言う欲望の檻に迷い込んで
Track attire just tell you I'm tired and ran away
陸上のウェアを着てるのは、もう疲れてて逃げ出したいからさ
[解説]
・「壁」はコンプトンのゲットーでもあり、彼の閉ざした心のことでもある。彼は決して悪人として生きていくことを望んではいないが、壁の中にいる限り破壊的な衝動に苛まれることになる。逃げ出したいとは思っていても、仲間たちのPeer Pressureの中では不可能に近い。
I should ask a choir: "What do you require
コーラス隊に聞いてみようか、「俺は何すればいいんだ?
To sing a song that acquire me to have faith?"
信仰を得られるような曲を歌うには」
As the record spin I should pray
俺は回るレコードに祈るべきなんだろうな
[解説]
・ケンドリックはキリスト教信者として知られるが、この曲で描写される過去においてはそういうわけでもなかっただろう。自分の中に確固たる信念、信仰を築き上げる際、信者たちは聖書の教えをよりどころにするが、彼にとってはヒップホップが一種の信仰対象となっていたのである。
For the record, I recognize that I'm easily prey
それを聞いてて、自分が格好の獲物だってことに気付いた
I got ate alive yesterday
昨日は生きたまま食われたしな
I got animosity buildin', it's prob'ly big as a buildin'
憎しみが組み立てられた、ビルほどデカいやつがな
Me jumpin' off of the roof is me just playin' it safe
屋根から飛び降りるのなんてただの遊びだよ
[解説]
・彼は2大ギャングのどちらの人間とも関係があり、どちらにも所属していないという宙ぶらりんな立場であり、まさに格好の餌食だ。生きたまま食われた、というのは前曲の"Poetic Justice"のアウトロで彼をどやす二人の男の声が流れたことから考えて、その二人(シェレーンの身内のギャング)にリンチされたということだろう。
But what am I 'posed to do when the topic is red or blue
でも赤と青の話題になったらどうすればいいか分からなくてさ
And you understand that I ain't
俺はそうじゃないって分かってくれるよな
But know I'm accustomed to just a couple that look for trouble
まぁ俺はそういうトラブルの場にも慣れてて
And live in the street with rank
上下関係の厳しいストリートに生きてたんだ
[解説]
・赤と青の話題、要するに2大ギャングの話であるが、彼はどちらにも属していない。友達はそのことを理解してくれるかもしれないが、そうはいかないというギャングたちも少なくはなかっただろう。
No better picture to paint than me walkin' from Bible study
俺は聖書の勉強から逃げてきたんだって言えば分かりやすいだろ
And called his homies because he had said he noticed my face
俺の顔をみたことがあるってんで奴は仲間を呼んだんだ
From a function that tooken place, they was wonderin' if I bang
あの会合からずっと、俺がメンバーなのかって気になってたらしい
Step on my neck and get blood on your Nike checks
俺の首を踏みつけてナイキのチェックを血に染めればいい
[解説]
・コーラス隊の歌詞に続いて、キリスト教への言及がある。彼はコンプトンで生きていくことに必死で、そんなことに目を向ける余裕はなかった。
・彼は友達と連れ添ってギャングの会合に出ることもあったようだが、部外者だと知れてしまえばスパイの疑いや冷やかしへの怒りを浴びせられることになる。
I don't mind 'cause one day you'll respect
俺は気にしない、いつの日かお前らも尊敬するだろうから
The good kid, m.A.A.d city
狂った街の優等生を
[解説]
・コンプトンで何にも属さずある意味の優等生として生きていくことは生半可なことではない。彼を殴りつけ、リンチしたギャングの面々もそのことをいつか理解することになるだろう。
[Chorus: Pharrell Williams]
Mass hallucination, baby
集団幻覚さ
Ill education, baby
イルな教育ってやつだ
Want to reconnect with your elations?
あの高揚感を取り戻したいかい?
This is your station, baby
ここが君の降りる駅だ
[Verse 2: Kendrick Lamar]
All I see is strobe lights, blindin' me in my hindsight
見えるのはストロボのライトだけで、その時は何が起こったかなんてわからなかった
Findin' me by myself, promise me you can help
一人で正気に返ったよ、助けることだってできただろ
In all honesty I got time to be copacetic until
正直、別に気分が悪いわけでもなかった
You had finally made decision to hold me against my will
お前らが俺を拘束すると決めたあの時まではな
[解説]
・ギャングのメンバーに襲われ、意識がもうろうとするケンドリックの前にパトカーが表れる。彼は警察の登場に何か思うことがあったわけではなかったが、あろうことか被害者である彼を警官は拘束してしまったのである。
It was like a head-on collision that folded me standing still
立ったまま正面衝突におし潰されるようなもんだった
I can never pick out the difference and grade a cop on the bill
警官どもの違いとか階級なんざ知ったこっちゃない
Every time you clock in the morning, I feel you just want to kill
朝お前らがうろついてるのを見ると、俺を殺す気なんだって思う
All my innocence while ignorin' my purpose to persevere
俺が全く以て潔白でも、お前らは俺の辛抱を蔑ろにするんだ
[解説]
・彼はギャング、警察という相対する二つの勢力のどちらからも迫害され、もう行き場がないように感じている。次作"To Pimp a Butterfly"の代表曲である"Alright"でも、警察は黒人たちを殺そうとしているという歌詞がある。彼はまともに生きていくために彼なりの努力を積み重ねていたわけだが、警察はそんなこと気にしてはいないのだ。
As a better person; I know you heard this and probably in fear
より良い人として、って聞いたことあるだろ?それを恐れてるのも知ってるよ
But what am I 'posed to do when the blinkin' of red and blue
でも俺はどうしたらいいんだ、赤と青の点滅が
Flash from the top of your roof and your dog has to say woof
お前らの車から光って、犬が俺に吠えてるとしたら
[解説]
・警察は普通正義の味方としての働きを期待される、だがここで警察は詩的な正義を働かず、不当にケンドリックを拘束してしまうのである。アメリカの警官は基本的にそういったものとみなされており、警察自体も正義というレッテルにおびえながら業務をこなしているに違いない。赤と青の光はもちろんパトカーのランプのことである。
And you ask: "Lift up your shirt," because you wonder if a tattoo
それで言うんだ「シャツをまくれ」って、気になるんだろ
Of affiliation can make it a pleasure to put me through
ギャングのタトゥーがあるか、そうすれば俺は認めなきゃいけないもんな
Gang files, but that don't matter because the matter is racial profile
ギャングのファイルなんて問題じゃない、ただの人種別ファイルだから
[解説]
・ギャングのメンバーはその結束を確かめ、判別しやすくするために同じタトゥーを身体に彫ることが多い。決まり文句のようにシャツをまくれと疑いをあらわにする警察はその人自体を見ているのではなくその人の人種を見ているのだ。
I heard 'em chatter: "He's prob'ly young, but I know that he's down
あいつらが言うのを聞いたんだ、「こいつは若いし、ギャングだろうな
Step on his neck as hard as your bullet-proof vest
首をこの防弾ベストくらい固く踏みつけとけよ
He don't mind, he know we'll never respect
気になんてしないさ、俺らが絶対にリスペクトしないことくらい分かってる
The good kid, m.A.A.d. city."
狂った街の優等生をなんてな
[解説]
・これは警察側の会話として書かれたものであり、ケンドリックが拘束された経験を通して感じた警察の態度を表現するものになっている。彼らは若い黒人というだけでギャングの一味だと決めつけ、暴力を以て乱暴に扱い、その人物が懸命に、まともに生きていこうとしていようが気にしない。
[Chorus: Pharrell Williams]
Mass hallucination, baby
集団幻覚さ
Ill education, baby
イルな教育ってやつだ
Want to reconnect with your elations?
あの高揚感を取り戻したいかい?
This is your station, baby
ここが君の降りる駅だ
[Verse 3: Kendrick Lamar]
All I see in this room: 20's, Xannies and these 'shrooms
部屋にあるものといえば、20ドルの大麻に、ザナックスに、キノコだけ
Grown-up candy for pain, can we live in a sane
痛みを取るキャンディと育ってきた、まともに生きさせてはくれないのか
Society? It's entirely stressful upon my brain
社会性だって?そんなのストレスになるだけだ
You hired me as a victim, I quietly hope for change
お前が俺を被害者に仕立て上げた、変化を静かに願ってる
[解説]
・上げられた3つはどれもドラッグであり、痛みを取るキャンディとはこのことである。彼はギャングと近しい関係を持っており、もちろんドラッグの魔の手が迫ることとなる。彼の生きる社会は彼を社会的被害者に仕立て上げてストレスを増長させる。できることと言えば静かに変化を願うことだけだ。
When violence is the rhythm, inspired me to obtain
もしリズムが暴力なら、俺は欲しがったことだろう
The silence in this room with 20's, Xannies and 'shrooms
代わり映えない静寂の部屋、あるのは20ドルの大麻に、ザナックスに、キノコだけ
Some grown-up candy, I lost it, I feel it's nothin' to lose
このキャンディで育ってきた、でももう捨てた、なんてことなかったよ
[解説]
・リズムが暴力になる―ヒップホップカルチャーは音楽で暴力を代替しようという考えがもとになったものである。
・彼は前述のキャンディから脱却することを決め、それが自分にとって全く必要いものだと気づくことができた。
The streets sure to release the worst side of my best
通りにいるといつも自分の最悪な面が全面に押し出される
Don't mind, 'cause now you ever in debt to good kid, m.A.A.d. city
気にするな、お前も借りがあるんだ、狂った街の優等生にな
[解説]
・ストリートでは彼は優等生として振る舞うことは許されない。それは蔓延する同調圧力のせいでもあり、根本的な街の空気のせいでもある。そうした意味で"You"、つまりコンプトンの街それ自体や彼の周りの人間たちは彼に借りがあると言える。
[Chorus: Pharrell Williams]
Mass hallucination, baby
集団幻覚さ
Ill education, baby
イルな教育ってやつだ
Want to reconnect with your elations?
あの高揚感を取り戻したいかい?
This is your station, baby
ここが君の降りる駅だ
コンプトンという街でgood kidとして生きていくことの難しさ、彼の感じた言いようもな悔しさが伝わってくる一曲であった。
Kendrick Lamarの和訳はこちらから!https://kujpntranslation.wixsite.com/monolingo/blog/categories/kendrick-lamar
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