【和訳・解説】"The Art of Peer Pressure" - Kendrick Lamar|good kid, m.A.A.d city
- T.Y
- 2月27日
- 読了時間: 13分
更新日:3月10日
Kendrick Lamar不朽の2ndアルバム"good kid, m.A.A.d city"からトラック4、"The Art of Peer Pressure"を紹介する。peer pressureとは日本語でいうところの同調圧力に当たる言葉で、このアルバムを通しても重要な要素の一つである。
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[Intro]
Everybody, everybody, everybody
お前ら、お前ら、お前ら
Everybody sit yo bitch-ass down
皆大人しく座って
And listen to this true mothafuckin' story
このモノホンの話を聞くんだ
Told by Kendrick Lamar on Rosecrans, ya bitch
ローズクランズのケンドリック・ラマ―のな
[解説]
・ここまでのトラックでも名前が出されていたローズクランズは、彼のフッドであるコンプトンを横断する大通りの名前である。
[Chorus]
Smokin' on the finest dope, ayy-ayy-ayy-ah
最高の煙を吸い込むんだ
Drank until I can't no mo', ayy-ayy-ayy-ah
もう無理ってなるまで飲むんだ
Really I'm a sober soul
本当はそういうのはやらないんだけど
But I'm with the homies right now
今は仲間と一緒だからさ
And we ain't askin' for no favors
何も頼み事なんてないけど
Rush a nigga quick, then laugh about it later, ayy-ayy-ayy-ah
誰かボコして、それで笑うんだ
Really, I'm a peacemaker
実は平和主義者なんだけどな
But I'm with the homies right now
今は仲間と一緒だからさ
And Momma used to say (Say, say, say, say)
ママが言ってたんだ
One day it's gon' burn you out (Woo)
いつかボロボロになるって
One day it's gon' burn you out, out, out
いつかボロボロになるって
One day it's gon' burn you out (You, you, you, you, you, you)
いつか痛い目に遭うぞって
One day it's gon' burn you
いつか痛い目に遭うって
But I'm with the homies right now
でも今は仲間と一緒だからさ
[解説]
・"But I'm with the homies right now"―このフレーズはこの曲の中で何度も繰り返されることになる重要なものである。ケンドリック・ラマ―は乱れた地域で育ちはしたものの本来温厚な人物であり、(自分をgood kidと形容するくらいである)そんな彼でも悪党らしく振る舞わせる同調圧力がテーマになっている。
[Verse 1]
Me and my niggas four deep in a white Toyota
俺と仲間たち4人、白いトヨタに息をひそめて
A quarter tank of gas, one pistol, an orange soda
ガソリンは4分の1、ピストル一丁とオレンジソーダ
Janky stash box when the federales'll roll up
クスリの詰まった箱、警察はいつ来てもおかしくない
Basketball shorts with the Gonzales Park odor
ゴンザレスパークでバスケしたビブスが匂う
We on the mission for bad bitches and trouble
女とトラブルのためにやらなきゃいけないことがある
[解説]
・ゴンザレスパークでバスケットボールを楽しんでいた彼ら。その後に車を走らせながら何か決意を固めている様子が見て取れる。女とトラブル(主に金銭関係の悩みだろう)をどうにかするためにやらなきゃいけないことがあり、ガソリンが残り少なくなるまでドライブを続ける。
I hope the universe love you today
今日この世界がお前に微笑んでくれることを祈ってるよ
'Cause the energy we bringin' sure to carry away
俺らのエネルギーできっと我を忘れてしまうだろうから
A flock of positive activists that fill they body with hate
ヘイトを溜め込んだやんちゃな活動家が集まってくる
If it's necessary; bumpin' Jeezy first album, lookin' distracted
もし必要ならな、ジーズィーのファーストをかけて、そわそわして
Speakin' language only we know, you think it's an accent
俺らだけの言語でしゃべるんだ、多分なまってると思うだろう
[解説]
・前半、エネルギーのラインはこのアルバムの2曲目"Bitch Don't Kill My Vibe"を思わせるものである。ここでいうエネルギーというのは、ケンドリックと仲間たちが企む何かに向けられた行動力や決意のことだろう。
・ヘイトを溜め込んだ活動家―彼ら自身のことであるが、有事の際はすぐに駆け付けられるような結束を持っている。ギャングのメンバーやフッドに属する人間たちはその身内にしか通じないスラングを多々持っており、外から聞けば外国語のように聞こえるかもしれない。車内で流れるジーズィーのアルバムは、彼らのマッチョイムズを刺激する。
The windows roll down, all I see is a hand pass it
窓が下りて、見えたのは葉巻を回す手だけだった
Hotboxin' like George Foreman grillin' the masses
大勢を焚きつけるジョージ・フォアマンみたく温まってる
Of the workin' world; we pulled up on a bunch of workin' girls
業界のやつらもやっちまえる、お仕事中の女たちのところへ行って
And asked them what they workin' with
何して稼いでんだって聞いてみたんだ
Look at me, I got the blunt in my mouth
俺をじっと見てた、口にはジョイントを
Usually I'm drug-free, but, shit, I'm with the homies
普段はドラッグなんてやんないんだけど、仲間といるからな
[解説]
・車内は葉巻の出す煙が充満し、見えるのはそれを渡す手だけであった。プロボクサーであるジョージ・フォアマンは、バーベキューグリルのブランドであるジョージ・フォアマングリルの広告塔でもある。彼らはグリルのように煙を立たせていたのに加え、ジョージ・フォアマンのような攻撃的な気分を醸成していたのだ。
・ケンドリック尋ねた女たちが何を生業にしていたかといえば、路上にいて車から話せるという点から考えて恐らく立ちんぼであろう。そうした無礼な質問をわざわざできるほど、彼は高揚していたのである。
[Chorus 1]
Yeah, nigga, we off a pill and Rémy Red
おーしお前ら、クスリとレミーレッドがあるんだ
Come through and bust ya head, nigga!
こっち来てぶっ飛べよ、ほら!
Me and the homies
俺と仲間たち
Sag all the way to the liquor store
酒屋までドライブして
Where my niggas pour up 4 and get twisted some more
皆で4本開けて、さらに歪んでいくんだ
Me and the homies
俺と仲間たち
I ride for my mothafuckin' niggas
お前らが大事なんだよ
Hop out, do my stuff, then hop back in
車を降りて、やることやって戻ってくる
Me and the homies
俺と仲間たち
Matter of fact, I hop out that mothafucka
実際な、俺は車を飛び出て
And be like "doo-doo-doo-doot, doo-doo-doo-doo-doot!”
やってやるんだ、「バンバン、バンバンバン」ってな
[解説]
・レミーレッドというのはワインの名前である。後半の銃声の声マネから、何か悪事を計画していることがわかるが、それに向けて気分を高めるためにクスリと酒を用意したようだ。Sagというのはドライブをするという意味もあるスラングだが、ズボンを引きずる(Bboyがやるやつだ)という意味もあり、サグに見られるよう心掛けていたということかもしれない。
[Verse 2]
It's 2:30 and the sun is beamin'
2時半、太陽がまぶしい
Air conditioner broke and I hear my stomach screamin'
エアコンは壊れてる、胃がきりきり言うのが聞こえるよ
Hungry for anything unhealthy
不健康なものなら何にでも貪欲
And if nutrition can help me
栄養が俺をよくするとしても
I'll tell you to suck my dick, then I'll continue eatin'
そんなのクソったれだ、気にせず食べ続ける
[解説]
・カリフォルニアは年中を通してかなり暑い地域だ。それでも腹が痛くなるのはこれから待っていることを考えて緊張しているということだろう。
・アメリカに太っている人が多いのはここで彼が言うように不健康な添加物まみれの食べ物が蔓延しているからであるが、それをやめて健康な食生活を目指すのは本人の決断によるものである。彼自身も、この不健康な仲間内を抜け出して全うに生きようと思えばそうできるはずなのだ。
We speedin' on the 405, passin' Westchester
405号線を飛ばして、ウェストチェスターに差し掛かった
You know, the light-skinned girls in all the little dresses
わかるだろ、ラフな服を着た肌の明るい女たちがいる街だ
Good Lord, they knew we weren't from 'round there
なんてこった、すぐここの人間じゃないって気づかれた
'Cause every time we down there
だっていつもここまで来るときは
We pullin' out the Boost Mobile SIM cards
ブースト・モバイルのシムカードを持ってくるから
[解説]
・405号線は南カリフォルニアを縦に走る国道である。ウェストチェスターはコンプトンから少し北にいったところに位置する地域であり、少し片田舎の治安のよいところだそうだ。
・ブースト・モバイルは一般的なAT&Tなどの携帯会社よりも安価なプランを提供するキャリアであり、そのプリペイド携帯を使っていた彼らはより貧しいエリアから来たとすぐに気づかれてしまうのである。
Bougie bitches with no extensions
退屈したブルジョワの女ども
Hood niggas with bad intentions, the perfect combination
悪意にまみれたフッドの男ども、完璧な組み合わせだ
Before we sparked a conversation
話かけようとしてたとき
We seen three niggas in colors we didn't like
気に入らない色の服を着た3人の男を見かけたんだ
Then started interrogatin'
それから尋問が始まった
[解説]
・アメリカには2つの大きなギャング組織があり、青を標榜するクリップスと赤を標榜するブラッズと呼ばれるものがある。当然2つは対立しており、ケンドリックが住んでいるような地域では抗争が日常茶飯事である。この曲最後の部分からわかることだが、ここでケンドリックが同行していた仲間たちはクリップスに属する人間だと考えられる。
I never was a gangbanger, I mean
俺は別にギャングに入り浸ってはないんだ
I never was stranger to the fonk neither, I really doubt it
全く関係がないわけでもなかったんだけど、疑念があったから
Rush a nigga quick and then we laugh about it
そいつらをとっちめて、笑ってやった
That's ironic, 'cause I've never been violent
皮肉なこった、俺は平和なやつなんだぜ
Until I'm with the homies
仲間といないときはな
[解説]
・彼の父親もギャングの構成員であった(それくらい一般的なものなのである)ことが知られているが、彼自身はギャングに属したことはない。そんな彼でも、仲間といれば通りすがったブラッズを打ちのめしてしまえるのだ。
[Chorus 2]
(Just ridin', just ridin')
ただのノリだ、ただのノリなんだ
Me and the homies
俺と仲間たち
(Bullshittin', actin' a fool)
ふざけて、バカやってばっかり
Me and the homies
俺と仲間たち
(Trippin', really trippin')
狂ってるよ、ほんと狂ってる
Me and the homies
俺と仲間たち
(Just ridin', just ridin', just ridin')
ただのノリ、ただのノリ、ただのノリなんだ
[Verse 3]
Braggin' 'bout the episode we just had
さっきの話で自慢したよ
A shot of Hennessy didn't make me feel that bad
ヘネシーで幾分いい気分になってた
I'm usually a true firm believer of bad karma
普段は因果応報を深く信じてるんだぜ
Consequences from evil will make your past haunt ya
悪いことをすれば過去に苛まれることになるって
We tryna conquer the city with disobedience
この反抗心で街を支配してやろうと思ってた
Quick to turn it up, even if we ain't got the CD in
すぐ騒ぎ立てるんだ、CDがないときでも
But Jeezy still playin'
でも今はまだジーズィーがかかってて
And our attitude is still "nigga, what is you sayin'?"
俺らは「お前、何言ってんだ?」って態度だった
Pull in front of the house
あの家の前まで車を走らせる
That we been campin' out for like two months
かれこれ2か月くらい狙ってたところだ
The sun is goin' down as we take whatever we want
俺らが盗み放題していると、太陽が沈み始めていた
[解説]
・彼らはとる態度は、誰の忠告も聞き入れず自分たちのしたいことをするというものである。クスリや酒を決め込んだ彼らは全能感に浸り、強盗の成功を確信するのであった。
[Break]
Ayy, ayy, nigga, jackpot, nigga, pop the safe!
おいおいお前ら、ジャックポットだぜ、金庫もぶっ壊せ!
Ayy, nigga, I think there's somebody in this room!
なぁ、誰かこの部屋にいる気しないか?
Wait, what?!
は、何だと?
Nigga, there's somebody in this room!
おい、この部屋誰かいるぞ!
[Verse 4]
I hit the back window in search of any Nintendo
俺は裏の窓をかち割ってニンテンドーのゲームを探してた
DVD's, plasma-screen TV's in the trunk
DVDに、プラズマテレビもトランクに担ぎ込んだ
[解説]
・彼も裏の窓からその家に侵入し、ゲーム機や電化製品などできるだけ高く換金できそうなものをトランクに詰め込んだ。普段は非暴力的だ、ドラッグはやらないんだと言ってきた彼であるが、結局同調圧力に負けて強盗に加担してしまったのだ。
We made a right, then made a left, then made a right
右に、左に、それからまた右に曲がる
Then made a left, we was just circlin' life
それから左に、この繰り返しの人生みたいに回った
My mama called: "Hello? What you doin'?" — "Kickin' it."
ママから電話、「もしもし?何してるの?」―「ぶらついてるだけ」
I shoulda told her I'm probably 'bout to catch my first offense
多分初めてお縄になるかもしれないって言うべきだったんだけど
With the homies
仲間といるから
[解説]
・右に、左に、という部分で彼らは警察とカーチェイスを繰り広げる。そんなさなか彼のもとに母親から電話がかかってくるのだが、彼は真実をいうことはできなかった。まさに警察に捕まろうとしている車のなか、仲間たちも神経を研ぎ澄ましているという状況の中では不可能だったのかもしれない。
But – they made a right, then made a left
でも、右に、左に曲がって
Then made a right, then another right
それから右に、もういっちょ右に
One lucky night with the homies
幸運な夜だったよ、仲間たちとの
[Outro]
K. Dot, you faded, hood?
ケンドリック、お前顔色悪いぞ
Yeah, we finally got that nigga faded
あぁ、こいつぶっ飛んじまった
I think he hit the wrong blunt though
変なジョイント吸ったんじゃないか
Ooh, which one?
え、どれだ?
Well, which one he talkin' about?
えーっと、どれのこと言ってんだよ
I was finna hit the one with the shenanigans in it
なんか混ぜられてそうなやつがあったぜ
I pray he ain't hit that
これを吸ってなきゃいいけど
Nah, that nigga straight, he ain't hit that one
いや、こいつ大丈夫だよ、これは吸ってない
Got the shenanigans? Give that nigga the shenanigans!
混ぜ物があったって?それ渡してやろうぜ
Nigga, I think we should push back to the city, fo' real doe
なぁ、俺は本気で街に戻るべきだと思うぜ
Nigga, for what?
は?なんでだよ
What that nigga— what's that Jeezy song say, nigga?
何言ってんだお前、ジーズィーはなんて言ってたっけな?
"Last time I checked I was the man on these streets!"
「最後に確かめたときも俺はストリートの男だった」
Yeah, yeah, that shit right there
そうだそうだ、ほんとその通りだよ
I'm tryna be the nigga in the street
俺はストリートの男になろうとしてんだ
There he go. Man, you don't even know how the shit go
言わしとけ、お前、どうやってくかも分かってないだろ
Look, here's the plan, luv
見ろって、これが計画だ
We gon' use the kickback as an alibi, wait 'til the sun go down, roll out, complete the mission,
チルしてたってのをアリバイにしよう、陽が落ちるまで待って、繰り出して、ミッション完了だ
[解説]
・この部分から、ウェストチェスターまでわざわざいったのはアリバイ作りのためだったことが分かる。女の子に話しかけようとしたのにも、そうした意図が含まれていたのだろう。
drop K. Dot off at his mama van, at the park
ケンドリックは公園のママの車のとこで降ろしてやればいい
'Cause I know he tryna fuck on Sherane tonight
今夜シェレーンとヤるつもりらしいからな
That's what he's not gon' do
まぁできっこないだろうけど
Then we all gon' meet back at the block at about 10:30
それから俺らは10時半くらいにあのブロックでまた集めるんだ
That's straight, but we should meet up around 12
早すぎるって、12時くらいのほうがいいだろ
I'm tryna fuck on somethin' too
俺も今晩予定があんだよ
Nigga, sit yo dumb-ass back down!
お前、うるせんだよ!
Nigga, you ain't doin' shit tonight!
今夜は我慢してくれよ!
Matter of fact, nigga, get in the mothafuckin' car!
ホントにお前は、早く車乗れよ!
We finna get active!
やる時が来たんだ!
[解説]
・アウトロは強盗に行く前の仲間内の会合の様子であるが、ケンドリックは何か悪質なドラッグにあたってしまい(コカインと大麻の混ぜ物だとされる)、会話には登場しない。シェレーンと会う予定があるという部分から、この曲で語られたのは1曲目の"Sherane a.k.a Master Splinter's Daughter"より前の時系列に起こった出来ごとであることがわかる。
コンプトンの仲間たちとの苦い思い出、なんであんなことができたんだろうという驚きが感じられる一曲。フッドの空気感、加えてそれが生み出す同調圧力が若者にいかに大きな影響をもたらすかが自身の体験をもとにストーリーテリング形式で語られていた。
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