【和訳・解説】"Bitch, Don't Kill My Vibe" - Kendrick Lamar|good kid, m.A.A.d city
- T.Y
- 2月21日
- 読了時間: 11分
更新日:3月10日
good kid, m.A.A.d cityのトラック2は"Bitch, Don't Kill My Vibe"。前曲の父親のセリフからつながるこの曲は、ケンドリックが自身のキャリアの変化を感じ取り、くだらない人間たちやしがらみから逃れようとする様を切り取ったもののように聞こえるが、どのような本意があるだろうか。
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[Chorus: Kendrick Lamar & Anna Wise]
I am a sinner
俺は罪人だ
Who's probably gonna sin again
また罪を犯すことだろう
Lord, forgive me, Lord, forgive me
主よ、お許しください
Things I don't understand
分からないことだっていっぱいある
Sometimes, I need to be alone
時々、一人にならせてほしいんだ
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊さないでくれよ、俺の気分を壊すんじゃないぞ
I can feel your energy from two planets away
惑星を介してても君のエネルギーは感じるよ
I got my drink, I got my music, I would share it, but, today, I'm yellin'
酒と音楽ならある、別に分けてあげるさ、でも今日言いたいのは
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊さないでくれよ、俺の気分を壊すんじゃないぞ
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊さないでくれよ、壊すんじゃないぞ
[解説]
・前曲同様祈りの句から始まるこの曲、自分が罪人だという言葉からも彼が何かを悔いていることが分かる。MVも教会で撮られたものであり、キリスト教の影響を色濃く見ることができる。
[Verse 1: Kendrick Lamar]
Look inside of my soul and you can find gold and maybe get rich
俺の魂を覗いてみれば、黄金を見つけて豊かになれるはずさ
Look inside of your soul and you can find out it never exist
お前の魂を覗いてみても何も無いってことしかわからないだろう
[解説]
・ここでいう魂は、それをさらけ出した結果として出来上がった音楽のことを指すだろう。彼は常に聞く人にとって啓示的であろうとしており、その内容のことを黄金と表現している。この曲を通して、二人称の"you"は彼が軽蔑する不特定多数の人物(主に同業者だろう)にあてられており、ここでは彼らの曲に何ら内容がないことが指摘されている。
I can feel the changes
変化を感じるんだ
I can feel a new life, I always knew life can be dangerous
新しい人生が、決して油断しちゃいけないことも分かってる
I can say that I like a challenge and you tell me it's painless
俺は挑戦が好きだと言える、でもお前はそんなの辛くないって
You don't know what pain is
お前に痛みなんて分からないよな
[解説]
・彼は前作のSection.80リリース以来、急速に評判が広まった。そのため環境には大きな変化があっただろう。ただその挑戦と成功の裏側には、人には分からない努力と痛みが伴ったことも確かだ。嫉妬や無知からそれを蔑ろにするような人間に多く会ってきたはず。
How can I paint this picture when the colorblind is hangin' witcha?
色弱なお前に、どう絵を描いてやれるんだ?
Fell on my face and awoke with a scar, another mistake livin' deep in my heart
顔に降りかかって傷と共に目が覚めるんだ、心に失敗がまた一つと増えていく
Wear it on top of my sleeve in a flick, I can admit that it did look like yours
それをさらけ出すのだって造作ない、お前のと似たようなもんだよ
[解説]
・"paint a picture"は状況を説明するという意味を持つイディオムで、色覚に異常がある人にとっては絵を認識することが難しい(=状況が分からない)というダブルミーニングになっている。この"colorblind"というのは前のラインから続いて努力を認められなかったり軽んじたりする人という意味で用いられているが、「白黒」という意味で人種の問題に関心がない人や、「色に囚われすぎる」という意味でカラーギャングの問題にもつながりがある。
Why you resent every makin' of his? Tell me your purpose is petty again
なんで奴のすべてにケチつけるんだよ、どうせしょうもない理由なんだろ
But even a small lighter can burn a bridge, even a small lighter can burn a bridge
でも小さいライターでも橋は焼け落ちる、小さいライターでも橋は焼け落ちるんだ
[解説]
・この"him"はケンドリック自身のことを客観視した言い方だと考えられる。周りの人間に、僻み妬みというくだらない目的でこき下ろされることもあっただろう。ライターで橋が焼け落ちるという比喩には、そうした些いな感情が大きな結果をもたらしうること、また小さなきっかけで大きな進歩を生み出せることがあるというメッセージが込められていると考えられる。
[Pre-Chorus: Kendrick Lamar]
I can feel the changes
変化を感じるんだ
I can feel the new people 'round me just wanna be famous
ただ有名になろうと周りにいるだけの奴らがいるのも分かる
You can see that my city found me, then put me on stages
この街が俺を見つけて、ステージに押し上げてくれたって分かるだろ
To me, that's amazin'
俺にとっても驚きだったよ
To you, that's a quick check, with all disrespect, let me say this
お前にとっちゃ楽な金儲けか、軽蔑をこめて言わせてくれよ
[解説]
・彼は瞬く間にメインストリームに浮上したわけだが、そこが終着点とは微塵も思っておらず、それが他のラッパーと自分との違いと感じている。"check"というのは現金のことを表すスラングであるが、目先の現金を追い求める近視眼的なラッパーに対する批判はこの曲を通して展開されている。
[Chorus: Kendrick Lamar & Anna Wise]
I am a sinner
俺は罪人だ
Who's probably gonna sin again
また罪を犯すことだろう
Lord, forgive me, Lord, forgive me
主よ、お許しください
Things I don't understand
分からないことだっていっぱいある
Sometimes, I need to be alone
時々、一人にならせてほしいんだ
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊さないでくれよ、俺の気分を壊すんじゃないぞ
I can feel your energy from two planets away
惑星を介してても君のエネルギーは感じるよ
I got my drink, I got my music, I would share it, but, today, I'm yellin'
酒と音楽ならある、別に分けてあげるさ、でも今日言いたいのは
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊さないでくれよ、俺の気分を壊すんじゃないぞ
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊さないでくれよ、壊すんじゃないぞ
[Verse 2: Kendrick Lamar]
I'm tryna keep it alive and not compromise the feelin' we love
俺たちの愛するこの感情を生かし続けるんだ、妥協はしない
You're tryna keep it deprived and only cosign what radio does
お前はそれをかすめ取って、ラジオで流れるようなものだけに乗っかる
And I'm lookin' right past ya
もうお前のことなんてどうでもいい
[解説]
・ここでは失われつつあるヒップホップの原初たる感情についての彼なりの考えが述べられている。彼はメジャーに理解される良さを持たせつつも、内生的で深みのあるリリックを以てヒップホップの精神を受け継いでいくというキャリアを目指してきた。ラップミュージックという体裁を取るだけでその内実を無視し、金儲けにしか興味のない輩に鼻持ちならない気持ちがあるのも当然だろう。
We live in a world, we live in a world on two different axles
俺たちは互いに交わらない軸の上に生きてるんだ
You live in a world, you livin' behind the mirror
お前が住んでる世界は、鏡の裏のようなもんで
I know what you're scared of, the feeling of feeling emotions inferior
お前が劣等感を感じるのが怖くてしょうがないのも知ってる
This shit is vital, I know you had to, this shit is vital, I know you had to
これは絶対だ、そうしなくちゃならない、絶対なんだ、それからは逃れられない
[解説]
・彼はここまでのリリックの中で、自分の弱さをさらけ出すことの大事さ(実際このアルバムの主題はそのことにあてられている)を主張してきた。そんな彼だからこそ、自分を偽り、鏡で自分の顔を見ることすら怖くなっている他のアーティストへの批判ができるというわけだ。
・絶対だ、というのはお金は必要だ、という意味かもしれないし、彼が批判するラッパーがそういったスタイルを取らなければ生き残っていけないという意味かもしれない。後者の意味でとるならば、そうしなくちゃいけないのも分かっているというのは哀れみに見せかけた煽りのメッセージと取れる。
Die in a pitiful vain, tell me a watch and a chain is way more believable
みじめな虚栄心の中で死んでいく、鎖時計の方がよっぽど信頼できるって言ってみな
Give me a feasible gain, rather a seasonal name, I'll let the people know
俺にはふさわしいものをくれよ、一時的な名声なんかより、皆に知らしめてやるんだ
This is somethin' you can blame on yourself, you can remain stuck in a box
これはお前以外の誰のせいでもないんだ、行き詰ったままでいてもいいんだぞ
I'ma break out and then hide every lock, I'ma break out and then hide every lock
俺は抜け出して錠は全部隠しちまうんだ、俺は抜け出して錠は全部隠しちまうんだ
[解説]
・消えていくアーティストにはそれなりの理由がある。行き詰ってしまった現状を突破できるのはその本人だけであることは間違いない。鎖時計は古臭いものかもしれないが、彼らの時間間隔(一度成功を味わった故の虚栄心に由来する)よりは確実なものだ。
・錠を隠してしまう、というところからは自分が二度とその箱のなかに閉じ込められないようにするという覚悟と、自分の後の誰もそこに閉じ込めさせない、つまり自分がインダストリー全体の底上げに尽力するという確固たる意志を感じさせる。
[Pre-Chorus: Kendrick Lamar]
I can feel the changes
変化を感じるんだ
I can feel the new people 'round me just wanna be famous
ただ有名になろうと周りにいるだけの奴らがいるのも分かる
You can see that my city found me, then put me on stages
この街が俺を見つけて、ステージに押し上げてくれたって分かるだろ
To me, that's amazin'
俺にとっても驚きだったよ
To you, that's a quick check, with all disrespect, let me say this
お前にとっちゃ楽な金儲けか、軽蔑をこめて言わせてくれよ
[Chorus: Kendrick Lamar & Anna Wise]
I am a sinner
俺は罪人だ
Who's probably gonna sin again
また罪を犯すことだろう
Lord, forgive me, Lord, forgive me
主よ、お許しください
Things I don't understand
分からないことだっていっぱいある
Sometimes, I need to be alone
時々、一人にならせてほしいんだ
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊さないでくれよ、気分を壊すんじゃないぞ
I can feel your energy from two planets away
惑星を介してても君のエネルギーは感じるよ
I got my drink, I got my music, I would share it, but, today, I'm yellin'
酒と音楽ならある、別に分けてあげるさ、でも今日言いたいのは
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊さないでくれよ、俺の気分を壊すんじゃないぞ
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊さないでくれよ、壊すんじゃないぞ
[Bridge: Kendrick Lamar & Anna Wise]
Bitch, don't kill my vibe
気分を壊すんじゃない
You ain't heard the coast like this in a long time, don't you see that long line?
西海岸が盛り上がったのも久しぶり、長い列が見えない?
And they waitin' on Kendrick like the first and the fifteenth
皆ケンドリックを1日と15日みたいに待ってるんだ
[解説]
・ケンドリックが最も敬愛するのは、自身と出自を同じくする西海岸のレジェンド2Pacに他ならない。しかし彼の全盛期である90年代前半以降、ヒップホップは衰退の一途をたどってきたと言われている。実際ケンドリック・ラマーの登場以降、ヒップホップの勢いは増したことだろう。(日本でもケンドリックのハーフタイムショーを目にした人は多いはずだ)自分に続くようなアーティストが多くいると彼は確信していたようだ。
・1日と15日というのは、貧困層のための公的補助の振り込み日にあたる。長い列が見える、というのもこの引き出しに並ぶ人々を暗示しているのかもしれない。
Threes in the air, I can see you are in sync
3本指を掲げて、皆そろってるな
Hide your feelings, hide your feelings, now, what you better do
感情を抑えろ、表に出すんじゃない、そうすればうまくやれる
I'll take your girlfriend then put that pussy on the pedestal
お前の彼女を連れ去って台座の上で崇めてやるよ
[解説]
・3本指を掲げる、というのは前作Section.80のリードシングルである"HiiiPoWeR"を連想させる。シングルのジャケットには、3本指を掲げる観客の姿が切り取られている。

・"put pussy on the pedestal"というのは女性や性行為を過度に崇高なものとして崇めるという意味を持つスラング。ここではgirlfriendという言葉でヒップホップ自体が擬人化されており、彼にとってヒップホップが特別な意味を持つことが表現されている。
[Chorus: Kendrick Lamar & Anna Wise]
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊すんじゃない、この気分を壊さないでくれよ
Walk out the door and they scream, "It's alive"
ドアから歩み出て叫ぶんだ「まだ生きてる」って
My New Year's resolution is to stop all the pollution
新年の抱負は汚染を食い止めることだ
Talk too motherfuckin' much, I got my drink, I got my music
ちょっと喋りすぎたな、酒も音楽もあるんだ
I say, bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
だから、気分を壊すんじゃない、壊さないでくれよ
Bitch, don't kill my vibe, bitch, don't kill my vibe
気分を壊すんじゃない、壊さないでくれよ
[Skit]
K-Dot, get in the car, nigga
K-Dot、乗れよ
Come on, we finna roll out
やっとだ、車出すぞ
Nigga, I got a pack of Blacks and a beat CD
なぁ、タバコもCDもあるんだぜ
Get your freestyles ready
フリースタイルの準備いいか?
[解説]
・アウトロのスキットは友達が車でケンドリックを迎えに来た場面であり、次のトラックである"Backseat Freestyle"に繋がる。
痛みを経験しながら成功してもなお上を目指し続ける自身の姿と、目先の利益ばかりを追い求める他のアーティストの姿を対比して描いた一曲であった。気分を壊すな、というのは考えを深める時間を邪魔するな、という意味もあるだろう。
Kendrick Lamarの和訳はこちらから!https://kujpntranslation.wixsite.com/monolingo/blog/categories/kendrick-lamar
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